「…おにいちゃん」
見上げるとおにいちゃんの瞳の中にわたしがいる。
たったそれだけの事がとっても嬉しい。
今、凄く気持ち良くて、ぽかぽかしてて、ぽーっとしてる。
だって生まれたままの姿でおにいちゃんの腕の中にいるんだもん。
わたしの胸が、おにいちゃんの胸にぴったりとくっついちゃって、柔らかいマシュマロみたいに形が変わっちゃってる。
ううん。それだけじゃない。
すべすべしたおなかも、柔らかい太股も、何もかも、葉月の全部がおにいちゃんに触れていて……ドキドキドキドキしているの。
おにいちゃんもドキドキしてるね。
わたしのも聞こえてるのかな?
「葉月…」
「んー…」
いきなりぎゅっと力いっぱい抱き締められた。
息ができないくらい。
壊れちゃいそう。
でも気持ち良いの。
どうしよう。
あ…。
このにおい。
おにいちゃんのにおい。
…大好き。
わたしもおにいちゃんの背中に手を回した。
「ねぇ…知ってた?」
「…ん?」
「おにいちゃんってね……とってもとってもあったかいんだよ」
「…葉月もあったかいよ」
おにいちゃんの手がいつの間にかわたしの頭を撫でてる。
もっと撫でて欲しくて、わたしからおにいちゃんに擦り寄っちゃった。
猫みたいね、わたしって。
「にゃあん」
「…こら」
おにいちゃんったら、困ったような口ぶりするけど、視線はすっごく優しいの。それで、さっきよりずっと優しく撫でてくれるの。
「にゃにゃにゃん」
抱き着いたままごろごろと擦り寄ると
「……あ」
おなかのとこに、何か触れてきた。
熱くて、柔らかくて、でも固く…て。
「凄…どんどん…や…やだ…」
わたしだって何が当たってるかくらいわかってる。
でも、こんなになっちゃうの?
「葉月が可愛いから、こうなっちゃうんだよ」
「…ほんと?」
思わず聞き返しちゃった。
だって、隣の席の瑠璃ちゃんの方がずーっと可愛いと思うし、胸だって瑞穂ちゃんの方が大きいし…。
「ほんとだよ…」
「…んぅ」
わたしの不安がわかっちゃったみたい。
いきなり、でも優しく唇を塞がれた。
「…はぁ…おにい……んんぅ……」
一度離れた後、今度は凄い、しびれるような…あ、おにいちゃんの舌が、葉月の舌に絡みついてくるぅ。びっくりしたけど頭をおにいちゃんに押さえられてて逃げられない。ううん。もしそうじゃなくてもわたしは逃げられるわけないよ。こんなにあったかくて、気持ち良いおにいちゃんの腕の中からなんて…。
「……ぅ……ぁ」
厭らしい水音が響いてる。
聞こえるんじゃなくて頭の中に直接感じてるの。
ぴちゃぴちゃぴちゃって、
おにいちゃんの舌が、わたしの口の中を這い回ってる。絡ませてくる。吸い上げられてる。上顎を擦られるたび、頭の後ろがビリビリする。
声を上げたいの。
気持ち良い、って。
でも口を塞がれてるから言葉に出来ない。激しい吐息とくぐもった小さな声、あとは身体を震わせる事だけしか出来なかった。
声に出せない事がこんなに辛いなんて思わなかった。
そしてこんなに気持ち良いなんて…。
「はぁ…はぁ…」
「葉月…」
「…あ」
「…」
じっと見つめるおにいちゃんの瞳が、わたしの言葉を待っている。
「…」
「…」
葉月だって女の子なんだよ、おにいちゃん。
は、恥ずかしいんだよ。
言葉にするのって。
「あ…」
また優しく抱き締められた。
耳もとにおにいちゃんを感じる…。
『葉月』
ず、ずるい…そんな…。
『葉月…』
耳が熱い…。
おにいちゃんがわたしの名前を呼ぶ。
駄目…。
耳もとで、熱く囁かれてる。
『葉月……』
身体が震える。揺さぶられてる。
でも、おにいちゃんはそれ以上の事をしてくれない。
葉月から言わなきゃ駄目なの?
どうしても言葉にさせたいの?
『葉月………』
さらに声が響く。熱い息も吹きかけられる。
駄目…我慢出来ない…おにいちゃんの意地悪ぅ…。
もう一度声をかけられたら、わたしはきっと言葉にしてしまう。
…いいよ、って。
わたしもおにいちゃんと一つになりたい、って。
・
・
・
そして、とうとうその時が来たの。
なぜかおにいちゃんの声じゃなくて、瑠璃ちゃんの大きな声で!?
「起きて、葉月ちゃん。駄目! 先生が見てる」
「…いいよ、おにいちゃぁん」
自分自身、言った瞬間『しまった!』って気が付いた。
瑠璃ちゃんの声だ、って気付いたのに、もう間に合わなかった。
しかもねだるように甘い声で。
授業中なのに、いつの間にかうとうとしてたのね。
おにいちゃんのベッドに潜り込んでてあんまり寝てなかったからかな。
気が付くと、すでに教室中が爆笑の渦。
起こそうと声をかけてくれた瑠璃ちゃんったら、真っ赤な顔して固まってる。
やだぁ、どうしよう。
どんどん顔が赤くなっちゃう。
「葉月さん!」
先生の険しい声に思わず身体がすくんだ。
「どんな夢を見ていたのか知りませんが、今は授業中です。わかりますね」
「はい」
「それでは今から貴方は何をするべきなのかわかりますか?」
「…はい」
恥ずかしいからちょうど良かった。
素直に廊下に出た。
廊下に立たされたなんて初めて。
閉めきられた教室の中から、まだ笑い声が聞こえてくる。
恥ずかしいよぉ。
くすん。
授業が終わって教室に戻ると、にこにこしながら二人が待ってた。
「ねぇねぇ、どんな夢見てたのよぉ。は・づ・き」
瑞穂ちゃんがおでこを突っ突く。
「な、何も見てないよぉ」
机にうつ伏せになって顔を隠す。
言えるわけないじゃない。
おにいちゃんと……だなんて。
「『いいよ、おにいちゃぁん』…なんて瑠璃に甘い声で囁いたくせに」
「瑠璃ちゃん!!」
瑠璃ちゃんが、しかも声音まで真似て言うもんだから、思わず大きな声出しちゃった。
もう…もう…意地悪ぅ。
「今度紹介してよね、葉月」
「え?」
「夢の中に出て来た皇子様、葉月のお兄さんに。いいでしょ?」
瑞穂ちゃんがとんでもない事言い出した。
瑠璃ちゃんも、自分を指さして一緒に連れて行けってゼスチャーしてる。
「で、でも、その…」
「紹介してくれないと、他のクラスにも言っちゃうよぉ」
「そ、そんなぁ…」
「じゃあ決まりねっ。…あ、私、これからクラブだから先に行くね」
言うが早いか、あっと言う間に瑞穂ちゃんが教室から出てっちゃった。
「…瑠璃の事も忘れないでね」
静かに教室を後にする瑠璃ちゃん。
「…あ、あの…あの…」
わたしの虚しい抗議は、誰もいない教室だけが聞いていた。
・
・
・
あれもこれも全部おにいちゃんが悪いんだっ!
セーラー服も脱がずにベッドに倒れ込む。
「…おにいちゃん」
さっきの夢を思い出す。思わず笑いがこみ上げてきた。
「ふふ…」
考えてみれば、昨日の方がもっともっと凄い事してたよね、おにいちゃんも…それにわたしも。
ずっとずっと気持ち良かったしね。
おにいちゃんの…凄く熱くて固かったよ。
あ…。
思い出しただけで身体の中が熱くなってきちゃった。
「…ぅ……やぁ…」
自然に太股が擦り合う。
駄目駄目。頭を振って意識を戻した。
もう自分でしないって決めたんだから。
このままじゃ、またおにいちゃんの事考えながらひとりエッチしちゃうもん。
ちゃんとおにいちゃんに気持ち良くしてもらわなきゃ…ね。
「…はぁ」
背中にぞくりと震えが走った。
ちょっと思い出しただけなのにな。
触らなくても、胸もキュンって固くなってるのがわかる。
「あ…染みになっちゃう」
慌ててスカートを脱ぐと、もうショーツが少し濡れてた。
そのまま下着姿でベッドに潜り込む。
「まだ5時前…か」
ちゃんと寝ておかなきゃ。
おにいちゃんに約束したもん。一緒に夢を見ようって。
「…ぅん」
身体が期待に細かく震える。
やっぱりわたしっておかしいのかな。
でも、でももう止められない。
これからもずっとお兄ちゃんの夢を見るんだから。
夜はおにいちゃんの腕の中で。
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そして明るいうちだって……白昼夢を、ね。
祝、20000Hit(^^)
おめでとうございます_(__)_ 前回、10000hitのお祝いとして拙い文章をお送りさせて頂いたのが8月末ですから、1ヶ月くらいしか経っていないのに、もう20000hit!! ただただ驚くばかりです。それだけ葵日向さんの作品を期待している皆さんが多いと言う事でしょうね(^^)
今回は、なんとなくこの前の続きみたいなお話を書いてみました。
前回のと同じくらいの量にしようとまとめてみました。きっと続けて書いていたら、そのまま夜になって、おにいちゃんとドキドキ…しちゃったかもしれませんね(*^_^*)
葵日向さんへ(^^)/
作品の執筆、頑張ってくださいね。アップ間近の第4章も楽しみにしてます!