• 昭和43年の「8月3日 サンケイ 対 巨人 ダブルヘッダー第二試合(神宮球場)」である(第一試合は16時開始)。
• サンケイは別所監督、巨人は川上監督である。
• 「3回裏 0-0 からジャクソンのタイムリー打でサンケイが先取点」の状況から始まり、 「4回表 巨人は二番の土井から攻撃」のところで終わっている。
• 放送局から録音テープを借りて使用したかもしれないが、 実際の放送をキヌタラボラトリで録音して使用した可能性も高い。

種別	放送局	時刻	解説者	実況
テレビ	フジテレビ	16:00〜18:30	児玉利一	小篠
	東京12チャンネル (現テレビ東京)	19:00〜21:30	宇野光雄	鳥山
ラジオ	TBS	18:50〜	水原茂
	文化放送	18:30〜	堀本律雄
	ニッポン放送	18:27〜	関根潤三

テレビか?ラジオか?

• テレビとする根拠
  上に示した解説者の話の中に「画面」という言葉が出てきている、 アナウンサーがボールカウントなどの実況をあまりしていない、など。
• ラジオとする根拠
  解説者は自分で勝手に話をどんどん進めているので 「画面」という言葉はテレビの放送という決め手にはならない、 アナウンサーが「バッティングチャンス、(ボールカウント)1-2、ランナースタート、 ショートゴロ、黒江、一塁の王へ送りました」と実況しているのはラジオっぽい。

ということで、これだけでは決め手がありません。他の手がかりを考えます。

時間的に除かれる放送

第一試合の時間帯なので、フジテレビのテレビ中継は除外されます。

解説者の話の内容で除かれる放送

解説者は監督の経験があるような雰囲気が感じられます。 しかも「別所」と呼び捨てにしていることから、別所監督よりも年上だろうということが想像できます。
これにより、ニッポン放送の関根潤三さんと、 文化放送の堀本律雄さんは、 若過ぎ、監督の経験もないので除外されます。
関根さんは現在も解説者で活躍中で、そもそも声が違います。 後に大洋、ヤクルトの監督を務めたこともありましたが、 このときは現役を引退して3年目でした。

解説者の声を特定

以下の二人の解説者が候補として残りました。どちらも条件に合致します。

• 水原茂(円裕)(高知出身)
  巨人で8回、東映で1回のリーグ優勝を成し遂げた名監督。
• 宇野光雄(和歌山出身)
  選手時代は巨人→国鉄。 昭和31年から5年間、国鉄の監督を務め、 金田の他にめぼしい選手のいないながらも4年連続4位、 特に打倒巨人の方針を打ち出し、最初の3年は11勝13敗2分、14勝11敗1分、13勝13敗、と健闘した。

ウルトラセブンはTBSテレビで放送されたものですから、はじめはTBSラジオの放送が有力候補かと思われました。
しかし、水原さんの声を知る方にご協力をいただき、 問題の声は水原さんのものではないことがわかりました。
よってTBSラジオも除外されます。

残る宇野光雄さんは、巨人の選手として、監督として、川上、別所の両氏の先輩にあたります。
また問題の解説者の声は、口調にかなりクセがあり、 宇野さんが和歌山県出身であること、 どこかトボけた様子がある監督として知られていたことなども、 これの裏付けとなります。

放送が確定

以上のことから、この放送は 東京12チャンネルのテレビ中継 (解説宇野光雄、実況鳥山) に確定します。
TBSテレビ製作の番組のバックに、他のテレビ局の放送の録音がそのまま流されていたという、 意外な事実が明らかになりました。
録音を担当したキヌタラボラトリが、ウルトラセブンの製作をしたTBSから録音テープを借りずに、 わざわざ他の放送局である東京12チャンネルから借りたとは考えにくいことです。 よってこれは、効果音録音の当日 テレビから野球中継の音声を録音して使用 したものだと考えられます。